はじめに

パート1でAI画像生成したキャラクターを、いよいよ「動くモデル」にしていきます。

Live2Dで動かすには、1枚のイラストをパーツごとのレイヤーに分割する必要があります。目・口・まゆ毛・髪・体などを別々のレイヤーとして用意することで、Live2Dが各パーツを個別に動かせるようになります。

この作業が本シリーズの中で最も時間がかかりますが、丁寧にやれば完成度の高いモデルになります。


必要なソフト

ソフト用途費用
Adobe Photoshopパーツ分け月約3,000円〜
CLIP Studio Paintパーツ分け(日本では人気)買い切り約5,000円〜
Live2D Cubism Editorモデリング無料(Pro版あり)

PhotoshopとCLIP Studio Paintはどちらでも作業できます。本記事ではどちらでも使える考え方を説明します。

Live2D Cubism Editorは公式サイトから無料版をダウンロードできます。無料版でも基本的なモデリングは十分可能です。


パーツ分けの考え方

なぜパーツ分けが必要か

Live2Dは「1枚絵を変形させる」技術ではなく、各パーツを個別に変形・移動させることで動きを表現します。たとえば「まばたき」は目のパーツだけを上下に変形させることで実現します。

パーツが細かく分かれているほど表情・動きの表現力が増しますが、作業時間も増えます。初めての場合は最低限のパーツ分けから始めましょう。

最低限必要なパーツ一覧

顔まわり

  • 顔の輪郭(ベース)
  • 白目(左右)
  • 黒目・瞳孔(左右)
  • ハイライト(左右)
  • 上まぶた(左右)
  • 下まぶた(左右)
  • まゆ毛(左右)
  • 口(開いた状態・閉じた状態)
  • 歯(口の中)

髪の毛

  • 前髪(フロント)
  • サイドの髪(左右)
  • 後ろ髪(バック)
  • アホ毛・飾り(ある場合)

体まわり

  • 体(胴体)
  • 肩・腕(動かす場合)

パーツ分け作業の手順

手順1:元画像をPhotoshop/CSPで開く

パート1で生成したPNG画像を開きます。AI生成画像は1枚のフラットなレイヤーなので、ここからパーツを「切り出す」作業が必要です。

手順2:レイヤー構成を作る

以下のようなレイヤー構成(グループ)を先に作っておくと整理しやすくなります。

code
📁 hair_back(後ろ髪)
📁 body(体)
📁 head(頭・顔グループ)
  📁 hair_front(前髪)
  📁 face(顔のベース)
  📁 eyebrow_L(左まゆ毛)
  📁 eyebrow_R(右まゆ毛)
  📁 eye_L(左目グループ)
    - eye_white_L(白目)
    - eye_iris_L(虹彩)
    - eye_highlight_L(ハイライト)
    - eye_lid_upper_L(上まぶた)
    - eye_lid_lower_L(下まぶた)
  📁 eye_R(右目グループ)
  📁 mouth(口グループ)
    - mouth_upper(上唇)
    - mouth_lower(下唇)
    - mouth_inside(口の中)

手順3:各パーツを切り出す

  1. 選択ツール(ペンツールや投げなわツール)でパーツの輪郭を選択
  2. 選択範囲をコピーして新しいレイヤーに貼り付け
  3. 元のレイヤーの該当部分は消去(または塗りつぶして隠す)

重要なコツ:パーツの「のりしろ」を残す

たとえば目のパーツは、まぶたで隠れる部分も少し広めに描いておきます。Live2D上でまばたきしたとき、パーツの端が見えてしまうのを防ぐためです。

手順4:隠れている部分を補完する(クリンナップ)

AI生成画像では、首が服に隠れていたり、後ろ髪が前髪に隠れていたりします。動いたときに「隠れていた部分」が見えてしまわないよう、各パーツを見えない部分まで描き足す必要があります。

スタンプツールやコピースタンプで似た質感を補完するか、シンプルなパーツなら塗りつぶしで対応します。

手順5:PSDファイルで保存

すべてのパーツを分けたら、PSD形式(Photoshop形式)で保存します。Live2D CubismはPSDファイルを直接読み込めます。


Live2D Cubism Editorの基礎知識

主要な概念3つ

1. アートメッシュ

各パーツに張り付ける「メッシュ(三角形の網目)」です。このメッシュの頂点を動かすことで、パーツを変形させます。

2. デフォーマ

複数のアートメッシュをまとめて変形させる「入れ物」です。たとえば「頭部デフォーマ」の中に目・眉・口のパーツを入れると、頭全体を回転させるときに中のパーツも一緒に動きます。

3. パラメータ

「目の開き具合」「頭の向き(X軸・Y軸)」「口の開き具合」など、アニメーションのスライダーです。VTube Studioがフェイストラッキングの結果をこのパラメータに割り当てて表情を動かします。

Cubismで最初にやること

1. PSDを読み込む

「ファイル → 新規 → PSDから新規作成」でパーツ分けしたPSDを読み込みます。各レイヤーが自動的にアートメッシュとして配置されます。

2. メッシュを自動生成する

全パーツを選択して「メッシュの自動生成」を実行します。まずは自動生成でOKです。後で手動で調整することもできます。

3. デフォーマを設定する

回転デフォーマと曲面デフォーマを組み合わせてパーツをグループ化します。

code
頭部回転デフォーマ
  ├ 体の回転デフォーマ
  │   └ 体パーツ各種
  └ 顔グループデフォーマ
        ├ 前髪デフォーマ
        ├ 目(左右)
        ├ 眉(左右)
        └ 口デフォーマ

4. パラメータに動きを設定する(キーの打ち込み)

最も重要な作業です。たとえば「目の開閉」パラメータを例にすると:

  1. 「目の開閉」パラメータのスライダーを「1.0(開いた状態)」に合わせる
  2. まぶたパーツが開いた位置になっていることを確認してキーを打つ
  3. スライダーを「0(閉じた状態)」に動かす
  4. まぶたパーツを目を閉じた位置に変形させてキーを打つ

これで「目の開閉」が動くようになります。同じ手順を各パーツ・各パラメータに繰り返します。

優先して設定するパラメータ

初めての場合、以下のパラメータを優先して設定しましょう。VTube Studioが最もよく使うパラメータです。

  • ParamAngleX(頭の左右向き)
  • ParamAngleY(頭の上下向き)
  • ParamAngleZ(頭の傾き)
  • ParamEyeLOpen / ParamEyeROpen(左右の目の開閉)
  • ParamMouthOpenY(口の開き)
  • ParamBrowLY / ParamBrowRY(左右の眉の上下)

Live2D Cubismでよくある躓きポイント

Q. パーツが意図しない方向に変形する

メッシュの頂点数が少なすぎる可能性があります。メッシュを選択して「頂点を追加」で細かくすると自然な変形になります。

Q. 目のまばたきで黒目が見えてしまう

まぶたパーツのメッシュが、黒目パーツをちゃんと覆えていません。まぶたパーツのメッシュを黒目より広く設定してください。

Q. 頭を横に向けたとき顔が崩れる

デフォーマの階層設定を見直してください。顔内のパーツが頭部デフォーマの外に出ていると、頭が回転したときに顔パーツだけ動かなくなります。


モデルのエクスポート

モデリングが完了したら「ファイル → 組み込み用ファイルのエクスポート」から以下のファイルを生成します。

  • model3.json:モデルの設定ファイル
  • moc3:モデルの本体データ
  • physics3.json:物理演算設定(髪の揺れなど)
  • テクスチャアトラス(PNG):パーツ画像をまとめたもの

これらをひとつのフォルダにまとめておきます。次のパート3でVTube Studioに読み込みます。


まとめ

パート2ではパーツ分けとLive2Dモデリングの基礎を解説しました。この作業は慣れるまで時間がかかりますが、シンプルなモデルから始めて少しずつ改善していくのがおすすめです。

パート3(最終回)では、完成したモデルをVTube Studioに読み込み、フェイストラッキングで実際に動かして配信デビューするまでの手順を解説します。